こんな日の、こんな時に

「会社辞めたの?」と好奇心だけで聞いてくる母親のうざさはまぁいい。
所詮私は扶養家族だ。
仕事のことを聞かれるのは仕方ない。
「辞めてないけど、休んでる」って返事したら、「もっと近いとこにすればいいのに」だってさ!
あははははははははは!
私が転職出来るだけの元気があると思ってるんだ!
ていうか、こんな私が転職できると本気で思ってるんだ?
すんごい恵まれた環境の職場に通う元気すらないから休んでるんだって、解ってなかったんだ!
近ければ通える?
そんな程度のことだったら、大学の3,4年の時だって何個も単位落としたりしなかったよ!
解ってなかったんだ!
ひょっとして、知らない?
それともお得意の常套手段で、忘れちゃったのかな?
「あんたのせいで私は心の病気になったんだ」って面と向かって3年前に言ってやったのにね!
あははははははははは!
ずっと鬱で休んでたら父親は「風邪でもひいたのか?」とか言うしさぁ!
その時は、あのボンクラ親父に人を心配するような心配りが出来たのかと、心の底から感心したのでいっぱいだったけど。
今、思い出せばさぁ、私の持病のこと、忘れてるよねぇ?
それとももうとっくに治ったとでも思ってる?
毎月病院に通って、毎日薬飲んで、最近は時々増える左腕の傷跡も、全部全部気付いてなかったんだ?
興味がないから。
どうでもいいから。
知ってるよ。
とっくに知ってる。
ねえ、おとうさん、おかあさん。
あなたたちはそういう人だもんね。
母さん、言ったよね。
「あんたがどこでどう死のうと勝手だけど、こっちの迷惑になるようなことはしないで」って。
ずっと、母さんは私を産んだことを後悔して、私のことを恨んできたんだもんね。
父さん、私が昔から、母さんに何を言われても、ずっと知らん顔してたよね。
気に障るようなことをすると、「誰が養ってやってると思ってるんだ」って言って、家から追い出したよね。
いつもそのまま追い出したことも忘れてお酒飲んで寝ちゃってたよね。
その間、私たちがどんなに惨めに泣いてても、寒さに震えてても、夜が更けて固い地面の上で眠りこけることになっても、全然興味がなかったでしょう?
ずっと、父さんは自分の夢ばかり見ていて、現実の私たちをちっとも見ようとしなかったもんね。
知ってるよ。
知ってたよ。
ただちょっと、最近ちょっとだけ、忘れて油断してただけ。
…甘えてたのかなぁ。
駄目だね、こんなことじゃ。
父さん、私にとってのあなたは、ただの金ヅル。
母さん、私にとってのあなたは、ただの無給家政婦。
あなた達が世間の体裁の為に私に衣食住を提供してくれるというのなら、それを利用できるだけ利用する。
必要がなくなったら、棄てる。
ただ、それだけの、存在。
そして、いつか「体裁」という名目が消えたとき、私も棄てられるんだろう。
そういう、関係だから。
忘れちゃいけなかったのに、忘れそうになってた自分の馬鹿さ加減に腹が立つよ。