2/12 笑う

私は笑う。
どうでもいい会話の適当な相槌の代わりに。
大して好きでもない人へのご機嫌とりのために。
大事な人に、本当の自分を隠すために。
適当な笑顔で、何もかもを誤魔化すために、毎日毎日、作り笑いを浮かべる。
毎日さして面白くもないのになんでみんなあんな笑ってんのアホなんじゃない?…って小さい頃は思ってたけど、今じゃ私が毎日さして面白くもないのに作り笑顔で笑ってる。
アホは私だったのか。
だって、笑ってなきゃ、誤魔化さなきゃ、隠さなきゃ、…誰もいなくなっちゃうから。
誰かの全部を好きになるなんて、途方もなく人知を越えたでっかい器がないと無理だと思う。
それは知ってる。
全部が好きじゃなくたって、好きにはなれる。
それが普通だと思う。
だけど、普通サイズの器じゃ、ありのままの私はどうやったってあぶれちゃうんだ。
駄目なところが多すぎて、誰の器にも入らない。
だから駄目なところを隠して、普通の器にも入れるように作り笑いしてるんだ。
それぞれの人に、それぞれの作り笑い。
あの人にはこういう「けい」の顔で、別の人には別の「けい」の顔。
相手に合うように、相手の器に入るくらいにだけ本当の自分を見せて、入らない分は隠して「けい」の顔で補う。
そうやってたくさんの「けい」の出来上がり。
全部が嘘なわけじゃない。
だけど、一つも嘘がない「けい」なんて、どこにもいない。
嘘と作り笑いの「けい」の壁に阻まれて、本当の私は誰とも会えない。
ひとりぼっちで、誰の手も届かない。
だけど、本当は知ってるよ。
もう分かってるんだよ。
みんな、私が思うほど、私のこと嫌いじゃないよね。
そこまで小さい器じゃない。
本当は、私が何をやったって、何を見せたって、大抵のことは笑って許してくれる。
…そうでしょ?
私が必死に隠してるものは、本当はみんなにとっては全然大したものじゃなくて、それどころかうっすら気づかれてなんかしたりして、私ばっかり馬鹿みたいにいつまでも気にしてる。
誰かが駄目なんじゃない。
私が駄目だから、いつまで経っても私はひとりぼっちで寂しい。
いつになったら大丈夫になるのかな。
もう一生そんな日は来ないのかな。
根本的に駄目なのかな。
困ったな、それじゃあ解決策が死ぬことしかなくなっちゃう。