愛が生まれた日

サビしか知らん。
そんなことはどうでもいい。
「衝撃!運命の十円おじさんとの出会い」を今日こそ書くのです。


バイト先の常連って、接客業なら結構いるよね。
特にうちのバイト先なんてスーパーなもんだから、常連なんてほとんど。
まともな人もいれば、気さくにパートさんと談笑してるような人もいる。
だけどね、一番目立つのが、やっぱキチガイ系の人。
バイトの仲間内では、そういうキチガイ系常連客にはあだ名をつけてるの。


「十円おじさん」もその一人。
その名の通り、精算の時に十円しか出さない中年親父。
出没時刻は夜7時以降、夏でも冬でも長袖ロングコートに帽子を目深に被る。たぶんそれしか服持ってないんだと思う。
ちょっとかなり臭い。
税金対策なのか何度にも分けてレジにやってくるわ、肉とか魚とか入れるためのポリ袋を大量にかっさらうわの不審者。
推測だけど、たぶん近所のホームレス。


でもね、みんなの間では凄く有名なおじさんだったんだけど、私はかなり鈍い上に人の顔を覚えないので、「今の十円おじさんだったよ!」とか言われてもさっぱり分からないわけですよ。
会話に入っていけないって、寂しい。
そんなわけで、十円おじさんが私のレジに来ないかと、常々思っていたのです。


そんな十円おじさんが!とうとう来た!!!


なんか私の時はマスクまでしてて、体毛が袖からもじゃもじゃ見えててかなり怪しさが増してた。
最初は全然気付かなかったんですよ。
3回目くらいにレジに来たとき「この人さっき2回くらい来たような…」とか思って、4回目で不審者だと確信した。
後で聞いて、彼が十円おじさんだったって知った。
だって十円以外の小銭も出してたんだもん!
なんか、最近の十円おじさんは十円以外にもお金を出すらしい。
ちゃんと稼いでるんかいな。


ちなみにその十円おじさん、なんか今日も私のレジに来た。
三回くらい。
相変わらず相変わらずの風貌と行動なんだけど、なんかね、今日は前とちょっと違ってた。
細かいとこだとマスクをしてなかったとかなんだけど、そんなことじゃない。
もっとかなり大きな違い。
なんか、おつりを返すときにニヤッと笑って軽くお辞儀してた。
笑った!笑った!!十円おじさんが!笑ったよ!
これはかなり凄いことですよ。
前回は愛想のカケラも見受けられなかった十円おじさんが、今日は笑ったんだよ!
思うに、十円おじさんは私に好意を抱いたんじゃないかな!
ここからそっと恋は芽生えて愛に発展……しないといいなぁ。
でもコンタクトを取るのは楽しいんだ。
着実に餌付けをしているようで楽しい。
また来ないかなぁ…!


それにしても十円おじさん、たぶんホームレスなだけで根はそんなに悪い人じゃないと思うんだけど……ど、ど、あの、出来れば普通の男の人に好かれたいんだ。恋を芽生えさせたいんだ。
……なんか変質的な人にばっかり好かれる気がして泣ける。
十円おじさんがレジに来て喜んでるような私だからいかんのかな。


つか今見たら異様に長かった。ごめん。